好酸球性副鼻腔炎|clila疾患情報

記事要約

【目次】
1.好酸球性副鼻腔炎とは
2.好酸球性副鼻腔炎の原因
3.好酸球性副鼻腔炎の相談目安
4.好酸球性副鼻腔炎の疫学的整理
5.好酸球性副鼻腔炎の症状
6.好酸球性副鼻腔炎の特徴
7.好酸球性副鼻腔炎の診断基準
8.好酸球性副鼻腔炎の重症度分類
9.好酸球性副鼻腔炎の治療

 

1.好酸救性副鼻腔炎とは

多発性の鼻茸(鼻ポリープ)で鼻閉と嗅覚障害を起こし、通常の薬が無効で、内視鏡下鼻内手術を行っても再発が多い、近年増加している難治性の副鼻腔炎です。血液や粘膜で好酸球が増えているのが特徴です。しばしば気管支喘息や中耳炎を合併することもあります。

 

2.好酸球性副鼻腔炎の原因

好酸球とはアレルギー反応と関連する白血球の一つですが、何らかの機序で好酸球が過剰に活性化することが一因と考えられています。明らかな原因は不明なため、2015年7月より厚生労働省にて難病疾患の1つに認定されました。

 

3.好酸球性副鼻腔炎の相談目安

においを感じにくい、ねばねばとした鼻汁、鼻づまり、鼻汁がのどに流れる、咳などの症状があるときが相談の目安です。

 

4.好酸球性副鼻腔炎の疫学的整理

好酸球性副鼻腔炎は国の指定難病の一つで、令和元年の特定疾患医療受給者数によると、現在日本では9211名の方が難病指定を受け治療を受けています。

 

5.好酸球性副鼻腔炎の症状

好酸球性副鼻腔炎の症状は一般的な副鼻腔炎と同じく、膿性・粘性鼻汁や鼻閉が見られますが、特に嗅覚障害が強いのが特徴です。合併症として、喘息、特にアスピリン喘息がしばしばみられるほか、好酸球性中耳炎を合併することもあります。好酸球性副鼻腔炎の鼻内には多発性の鼻茸が生じることがあります。

【参考】一般的な副鼻腔炎について
鼻腔につながる顔面骨の空洞を副鼻腔といい、副鼻腔の炎症を副鼻腔炎と呼びます。副鼻腔炎は急性副鼻腔炎と慢性副鼻腔炎に分けられます。急性副鼻腔炎は細菌やウイルス感染などによって副鼻腔に起こる急性の炎症で、膿性鼻汁、頭痛や顔面痛を生じ、通常は1~2週間で治ります。副鼻腔の炎症症状が3ヵ月以上続くものを慢性副鼻腔炎と呼びます。慢性副鼻腔炎では持続性の膿性・粘性鼻汁、鼻つまり、頭痛・顔面痛、嗅覚障害などを生じます。鼻の粘膜が慢性的に炎症を起こしていることにより鼻茸(はなたけ)という、ポリープが生じることもありあます。鼻茸は大きくなると、鼻腔をふさいで副鼻腔の換気を妨げ鼻閉の原因となり、副鼻腔炎を長引かせる要因となります。

 

6.好酸球性副鼻腔炎の特徴

好酸球性副鼻腔炎の特徴として、以下の点が挙げられます。
1)両側性
2)鼻茸を伴う 
3)CT所見にて篩骨洞陰影優位(上顎洞と比較して)
4)発症早期より嗅覚障害を呈する 
5)気管支喘息を合併していることが多い(40〜70%)
6)経口ステロイドが著効する 
7) 易再発性(非好酸球性副鼻腔炎と比較して、3.175倍再発しやすいという報告があります)

 

7.好酸球性副鼻腔炎の診断基準

<診断基準:JESRECスコア>

①病側:両側                          3点
②鼻茸あり                         2点
③CTにて篩骨洞優位の陰影あり 2点
④末梢好酸球の割合
   2%< 末梢血好酸球(%)≦5% 4点
        5%< 末梢血好酸球(%)≦10% 8点
10%< 10点                                                                                                     
JESRECスコア合計:11点以上を示し、鼻茸組織中好酸球数(400倍視野)が70個以上存在した場合をDefinite(確定診断)とする。

 

8.好酸球性副鼻腔炎の重症度分類

難病指定される条件は以下になります。

1)重症度分類で中等症以上
2)好酸球性中耳炎を合併している場合
・1)又は2)の場合、難病指定の対象となります 

1)重症度分類

CT所見、末梢血好酸球率及び合併症の有無による指標で分類します。
A項目:①末梢血好酸球が5%以上
    ②CTにて篩骨洞優位の陰影が存在する。
B項目:①気管支喘息
    ②アスピリン不耐症
    ③NSAIDアレルギー 
診断基準JESRECスコア11点以上であり、かつ
1.A項目陽性1項目以下+B項目合併なし:軽症
2.A項目ともに陽性+B項目合併なし or
  A項目陽性1項目以下+B項目いずれかの合併あり:中等症
3.A項目ともに陽性+B項目いずれかの合併あり:重症 

2)好酸球性中耳炎を合併している場合を重症とする。

<好酸球性中耳炎の診断基準>
大項目:中耳貯留液中に好酸球が存在する滲出性中耳炎又は慢性中耳炎 
小項目:(1)にかわ状の中耳貯留液(2)抗菌薬や鼓膜切開など、ステロイド投与以外の治療に抵抗性(3)気管支喘息の合併(4)鼻茸の合併─の4つの項目のうち、 大項目と小項目の2項目以上を満たす場合を確実例とする。ただし好酸球性肉芽腫性多発血管炎、好酸球増多症候群を除外する。

 

9.好酸球性副鼻腔炎の治療

現在のところ確実に有効な薬は、ステロイドの内服になります。多くの患者さんでは、数日の内服で鼻茸が縮小し、症状が劇的に改善します。しかしステロイドは副作用の可能性があるので長期は続けられないので、ステロイドをやめてしばらくすると再燃し、症状を繰り返すことが多いです。重症例には内視鏡下副鼻腔手術を行います。好酸球性副鼻腔炎にも関与するIL-4とIL-13というサイトカインの働きを直接抑えるデュピクセントという注射薬も近年保険適応になっています。

 

久保田 英里循環器内科医国立大学医学部卒。総合病院で初期研修後、狭心症、心筋梗塞、不整脈、心不全などの疾患の治療に従事。現在はその経験を元に、患者さんの気持ちに寄り添うことを心がけながら日々診療にあたっている。

 

<リファレンス>
難病情報センター 好酸球性副鼻腔炎
https://www.nanbyou.or.jp/entry/4538

深見耳鼻咽喉科 好酸球性副鼻腔炎と嗅覚障害
https://www.fukami-orl.com/sinusitis_allergy/eosinophilic_sinusitis_olfactory_disorder/

東京女子医科大学 耳鼻咽喉科学教室 好酸球性副鼻腔炎について http://www.twmu.ac.jp/TWMU/Medicine/RinshoKouza/121/ecrs.html