粉瘤とは|clila疾患情報

記事要約

【目次】

1.粉瘤とは
2.原因
3.粉瘤の症状
4.診断の方法
5.治療(手術方法)
6.鑑別診断  

 

1.粉瘤とは

 皮膚に生じる良性の腫瘍として最も多いものです。皮内および皮下の腫瘍で、表皮が袋状になって嚢腫(のうしゅ)を形成します。上から触れると可動性良く、コロコロと触れます。しかし、炎症を起こすと急に痛みを生じたり、赤く腫れ上がることがあります。アテロームとも言います。

 

2.原因

 毛穴の部分の表皮が真皮内に陥入し、それが増殖して角質物質を入れた嚢腫が形成されます。手掌や足底の一部のものは、外傷による表皮の陥入やHPV57,60感染などが関与すると考えられています。

 

3.粉瘤の症状

 普通は皮膚と同じ色調で少し盛り上がり、触れると動きやすい1〜2cm程度の皮内または皮下の結節として認められます。嚢腫が浅いところにあると灰青色に透見できることもあります。中央の毛穴が開口していると黒い点状にみえ、これを面皰(めんぽう)といいます。ニキビにのときにみられる毛穴が黒く詰まった状態と同じです(黒ニキビ)。

 頭頸部、体幹、腰部、臀部などに好発します。中央から内容が排出されることがあり、角質が腐ったようなものが詰まっているため、腐臭を伴う白色粥状物質を排出することがあります。

 炎症がなければ通常は自覚症状はありません。

<炎症性粉瘤>

 粉瘤は嚢腫(袋のような状態)になっていますので、中で破れて炎症を起こすことがあります。これを炎症性粉瘤といいます。それまで気づかなかった、気づいていたけれども何も症状がなかったものが、急に腫れ上がって痛みを生じます。この状態で慌てて病院に来られる方も多いです。

 

4.診断の方法

 典型的なものは視診、触診で診断可能です。

 足底にできたもの、ややわかりにくい場合にはエコーやMRIでわかることもありますが、確定は病理組織診断になります。

 

5.治療(手術方法)

 嚢腫壁を含めて外科的に摘出します。

 炎症性粉瘤では抗生剤内服を行います。疼痛が強い、波動をふれて膿瘍形成が疑われる場合には中央を局所麻酔下に切開排膿する場合もあります。炎症はおさまっても元の嚢腫がなくなるわけではないので一旦落ち着いても再燃することがありますので、炎症がおさまったときに全体を切除します。

 切除は大きさや炎症を繰り返して困るなど、ご本人の希望、相談の上になります。

 

6.鑑別診断

・石灰化上皮腫(毛母腫):

小児、若年者の顔面、頸部、上肢に好発し、通常単発性、3〜4cmまでの硬い皮内ないし皮下腫瘍。表面は皮膚色ないし青白く透見され、凹凸に富み骨様硬に触れます。

・脂肪腫:

全身どこでも生じる、単発または多発性で、大きさも様々である。通常は皮下組織内に存在するので、深くに触れます。エコーやCT、MRIでも鑑別できます。

・そのほかの皮膚腫瘍:

比較的まれな各種良性皮膚腫瘍がありますが、摘出の上で病理組織学的に鑑別されます。

 

永井 弥生   皮膚科医  皮膚科医として群馬大学病院准教授まで務め、豊富な経験を持つ。その後、医療安全担当者として大きな問題となった医療事故を発覚させ、3年半に渡って担当。医療者と患者の間のコンフリクト(苦情・クレーム・紛争等)対応の第一人者として、講演や研修などを行う。2017年オフィス風の道を立ち上げ、医療者と患者を繋ぐための活動を開始。皮膚科医としても群馬県内の病院にて診療している。