眼皮膚白皮症|clila疾患情報

記事要約

【目次】
1.眼皮膚白皮症とは
2.眼皮膚白皮症の原因
3.眼皮膚白皮症の相談目安
4.眼皮膚白皮症の疫学的整理
5.眼皮膚白皮症の海外動向
6.眼皮膚白皮症の症状
7.眼皮膚白皮症の診断
8.眼皮膚白皮症の治療
9.眼皮膚白皮症の予後

 

1.眼皮膚白皮症とは

眼皮膚白皮症は、出生時より皮膚、毛髪、眼のメラ ニン合成が低下ないしは消失することにより、全身皮膚が白色調を呈する遺伝性の疾患です。虹彩は青~灰色調、頭髪は白~茶褐色あるいは銀色を呈します。
眼の症状を伴うことが 多く、皮膚症状が明らかでなく、眼の症状のみのものは眼白皮症と呼びます。近年、全身症状を伴う眼皮膚白皮症を症候型としてまとめられることがあります。この症候型には、出血傾向を示すヘルマンスキー・パドラック症候群 、白血球巨大顆粒と免疫 不全を伴う チェディアック・東症候群、これに非常に似るが白血球巨大顆粒を持たない グリセリ症候群が含まれます。全身症状をともなわな いタイプを非症候型と呼び、非症候型眼皮膚白皮症としては 7 種類、症候型眼皮膚白皮症としては13種類、計20種類の原因遺伝子が報告されています。日本では約27%が非症候型眼皮膚白皮症4型であり、主要病型のひとつとなっています。

 

2.眼皮膚白皮症の原因

メラニン合成に関わる遺伝子変異によって発症する常染色体劣性遺伝性疾患です。非症候型の眼皮膚白皮症は7型、症候型のヘルマンスキー・パドラック症候群は9型、チェディアック・東症候群、グリセリ症候群は3型まで原因遺伝子が同定されており、今後さらなる新規遺伝子の同定がなされると予想されます。

 

3.眼皮膚白皮症の相談目安

出生時より皮膚や眼、頭髪の色調の異常があります。

 

4.眼皮膚白皮症の疫学的整理

2009年の調査では、白皮症を呈する患者数は 8,107 名、うち眼皮膚白皮症は約2%、つまり毎年約160人が特定機能病院を受診することが報告されています。

 

5.眼皮膚白皮症の海外動向

タイプによっても異なり、海外では、チロシナーゼ遺伝子関連型については、黒人で28,000人に 1人、白人で39,000人に1人という報告があります。P遺伝子関連型で はアメリカの白人で36,000人に1人、アフリカ系黒人で10,000人に1人、アフリカでは3,900人に1人とアフリカでかなり多いとされます。

 

6.眼皮膚白皮症の症状

非症候型・症候型とも全身の皮膚が白色調、青から灰色調の虹彩、矯正不能な視力障害や眼振等の眼症状、そして白から茶褐色あるいは銀色の頭髪を呈します。さらに症候型はそれぞれの疾患に随伴する全身症状(出血傾向、免疫不全、神経症状など)があり、さらに中高年に高率に間質性肺炎や肉芽腫性大腸炎を合併することがあります。
タイプによっても異なりますが、診断基準に主な症状がまとめられています。

 

7.眼皮膚白皮症の診断

<診断基準> 

I.眼皮膚白皮症の診断基準

A.症状

(皮膚症状)
1.皮膚が色白であり、日焼け(tanning)をしない。
2.生下時より毛髪の色調が白色、淡黄色、黄色、淡い茶色、銀灰色のいずれかである。
(眼症状)
3.虹彩低色素が観察される。
4.眼振が観察される。

B.検査所見

1.眼底検査にて、眼底低色素や黄斑低形成が観察される。
2.視力検査にて、矯正不可能な低視力がある。

C.鑑別診断

以下の疾患を鑑別する。
まだら症、脱色素性母斑、尋常性白斑、炎症後脱色素斑

D.遺伝学的検査

<診断のカテゴリー>
Definite(確実):A-1、-2とB-1をすべて満たし、さらにA-3、-4、B-2のいずれか1つ以上を満たし、Cの鑑別すべき疾患を除外し、Dを満たすもの。
Probable(疑い):A-1、-2とB-1をすべて満たし、さらにA-3、-4、B-2のいずれか1つ以上を満たし、Cの鑑別すべき疾患を除外したもの。
Possible(可能性あり):A-1、-2とB-1を満たすもの。

II.病型診断(眼皮膚白皮症のうちどの病型であるか)の診断基準

A.眼皮膚白皮症の診断基準で、Definiteか、Probableであること

B.出血傾向がある場合

1.血液検査により血小板機能異常を認める。

C.毛髪の色が銀灰色(silver-gray)の特異な光沢をしめす場合

1.白血球内部の巨大顆粒を認める。
2.皮膚病理組織で色素細胞に巨大メラノソームを認める。

D.遺伝子診断により以下のいずれかの遺伝子に病的変異が明らかであること

非症候型:TYR、P、TYRP1、SLC45A2、SLC24A5、C10orf11
症候型
ヘルマンスキー・パドラック症候群:HPS1、AP3B1、HPS3、HPS4、HPS5、HPS6、DTNBP1、BLOC1S3、PLDN、
チェディアック・東症候群:LYST
グリセリ症候群:MYO5A、RAB27A、MLPH

診断のカテゴリー:Aを満たし、さらに下記を満たす場合、病型を診断できる。
1.B-1を認める場合、あるいはDを満たす場合、ヘルマンスキー・パドラック症候群と診断する。
2.毛髪の色が銀灰色(silver-gray)の特異な光沢をしめし、C-1、-2をともに認める場合、あるいはDを満たす場合、チェディアック・東症候群と診断する。
3.毛髪の色が銀灰色(silver-gray)の特異な光沢をしめし、C-1、-2をいずれも認めない場合、あるいはDを満たす場合、グリセリ症候群と診断する。
4.BとCを共に認めない場合、あるいはDを満たす場合、非症候型の眼皮膚白皮症と診断する。

なお、眼皮膚白皮症は以下のように分類される。
非症候型(メラニン減少に伴う症状のみを呈するタイプ):眼皮膚白皮症(狭義)
症候型(全身症状を合併するタイプ):ヘルマンスキー・パドラック症候群、チェディアック・東症候群、グリセリ症候群

 

8.眼皮膚白皮症の治療

確立された治療法はなく、生活指導による悪化の予防と対症療法となります。
遮光が重要で、サンスクリーン剤の使用、 カモフラージュメイクなどの指導とともに、 皮膚癌の早期発見や早期治療を行います。眼科では、多くの施設で遮光眼鏡、各種コンタ クトレンズ、サングラスを使用し、屈折異常の矯正、 弱視訓練,視覚支援学校の斡旋などを行っています。特に生後 2 カ月~2 歳までは視覚刺激に対する感受性が高いため、早期から屈折矯正、弱視訓練を行うこ とは有意義です。それぞれの随伴する症状に対しては対症療法を行います。

 

9.眼皮膚白皮症の予後

白色調の皮膚は皮膚がんが発生しやすいので早期発見、治療が重要です。いくつかの遺伝子多型は悪性黒色腫(非露光部を含む)の疾患関連遺伝子でもあります。
眼症状は網膜の障害により弱視に至ることがあります。症候型はそれぞれの疾患に随伴する全身症状(出血傾向、免疫不全、神経症状など)があり、それらにより予後が異なります。

 

永井 弥生皮膚科医皮膚科医として群馬大学病院准教授まで務め、豊富な経験を持つ。その後、医療安全担当者として大きな問題となった医療事故を発覚させ、3年半に渡って担当。医療者と患者の間のコンフリクト(苦情・クレーム・紛争等)対応の第一人者として、講演や研修などを行う。2017年オフィス風の道を立ち上げ、医療者と患者を繋ぐための活動を開始。皮膚科医としても群馬県内の病院にて診療している。

 

<リファレンス>

眼皮膚白皮症診療ガイドライン 日本皮膚科学会https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/guideline/guideline_oca.pdf

眼皮膚白皮症 指定難病164 難病情報センター
https://www.nanbyou.or.jp/entry/4492