ルビンシュタイン・テイビ症候群|clila疾患情報

記事要約

【目次】

1.ルビンシュタイン・テイビ症候群とは 
2.ルビンシュタイン・テイビ症候群の原因
3.疫学
4.ルビンシュタイン・テイビ症候群の症状
5.ルビンシュタイン・テイビ症候群の診断方法
6.ルビンシュタイン・テイビ症候群の治療
7.ルビンシュタイン・テイビ症候群の経過、予後

 

1.ルビンシュタイン・テイビ症候群とは

 ルビンシュタイン・テイビ症候群は、遺伝子の異常によって生じる先天異常症候群の一つです。CREBBP遺伝子またはEP300遺伝子の異常が発症に関与することがわかっています。本邦での発症頻度は、10,000〜20,000出生に1人と考えられ、年間50〜100人程度の新規患者数が予測されます。

 本症は、幅広い母指/母趾、特徴的な顔貌、精神運動発達遅滞を主症状とし、その他全身の様々な臓器に合併症が生じます。顔貌の特徴としては、アーチ状の濃い眉、眼瞼裂斜下、鼻翼より下方に伸びた鼻中隔などがあります。

 特徴的な顔貌、手足の所見から生下時または幼少期に診断されることが多いと言われています。乳児期には呼吸困難、哺乳困難、体重増加不良、反復性感染、便秘などが問題となります。呼吸器感染を起こしやすい乳幼児期を乗り越えると、全身状態は比較的安定するとされています。
本症に対する根本的な治療法はなく、各症状に対して対症療法を行います。経過や予後は、合併している内臓疾患とその重症度によって異なります。
 

2.ルビンシュタイン・テイビ症候群の原因

 本症は、CREBBP遺伝子またはEP300遺伝子の異常によって発症することがわかっています。
CREBBP遺伝子は、ヒストンアセチル化に関与します。ヒストンアセチル化は、組織が分化していく発生過程で、特定の遺伝子群の働きを決定し、正常な組織の機能を維持するために重要であると考えられています。このヒストンアセチル化の異常のために、様々な臓器の症状を呈するものと考えられています。
 

3.疫学

 本邦での発症頻度は、10,000〜20,000出生に1人と考えられ、年間50〜100人程度の新規患者数が予測されます。
本症は常染色体優性遺伝の形式をとり、50%の確率で次世代へ遺伝します。しかし多くの症例は遺伝子の突然変異による孤立した新規の発生であるとされています。

 

4.ルビンシュタイン・テイビ症候群の症状

 本症は、特徴的な顔貌、手足の所見から生下時または幼少期に診断されることが多いと言われています。乳児期には呼吸困難、哺乳困難、体重増加不良、反復性感染、便秘などが問題となります。

【多くの患者さんに共通する症状】

  1. 幅広く、時に変形した母指、母趾
  2. 特徴的な顔貌
    アーチ状の濃い眉
    長いまつげ
    眼瞼裂斜下
    鼻翼より下方に伸びた鼻中隔
  3. 精神運動発達遅延
    中等度から重度の障害を認めます。

【その他の合併症】

  1. 成長障害
    出生時は標準体格であることが多いが、最終的には低身長(男性平均152cm、女性平均143cm)となります。
  2. 眼科疾患
    斜視、屈折異常、眼瞼下垂、白内障、緑内障など
  3. 心疾患
    約1/3に様々な先天性心疾患を認めます。
  4. 尿生殖器系
    男児のほとんどに停留睾丸を認めます。
    膀胱尿管逆流症、腎奇形
  5. 睡眠時無呼吸
  6. 皮膚
    わずかな外傷でもケロイドを生じることがあります。時に石灰化上皮腫が発生することもあります。その他、多毛など。
  7. 歯科疾患
    歯の叢生、不正咬合
  8. その他
    けいれん、筋緊張低下、便秘、頸椎の異常、膝蓋骨の脱臼、良性・悪性腫瘍など

 

5.ルビンシュタイン・テイビ症候群の診断方法

 本症の診断は臨床所見を基本としますが、確定診断には遺伝子検査を行います。
また、特徴的な顔貌、手足の指の所見、精神運動発達遅滞などから本症を疑えば合併する可能性がある疾患の有無を確認するため精査を行います。
 

 

6.ルビンシュタイン・テイビ症候群の治療

 本症の根本的な治療法はありません。したがって各症状および合併症に対し、それぞれ対症療法を行います。
特に新生児期から乳児期にかけては、哺乳困難、呼吸器感染、便秘が問題となります。ミルクの摂取方法の工夫(経鼻など)を行い、身体の成長を維持する必要があります。繰り返す呼吸器感染症に対しては適切な抗生剤治療を行います。

 

7.ルビンシュタイン・テイビ症候群の経過、予後

 新生児期、乳児期の繰り返す呼吸器感染を乗り越えると全身状態は比較的安定するといわれています。その後は、精神発達遅延による身体への影響が見られるようになるため、精神面、教育面での介入が必要になります。また肥満傾向になることが多く、栄養バランスの良い食事、適度な運動などを日常生活で心がけることが大切です。

 本症に伴う多臓器の合併症は慢性的に症状が続くものが多く、定期的な通院が必要です。また積極的に治療を行うことで予後の改善が見込まれます。

 

上野 ゆかり 整形外科医  2003年国立大学医学部卒業。整形外科医として大学病院、地域基幹病院にて臨床経験を積み、小児から高齢者まで幅広い年齢層に対応。家族の仕事により移住したフィリピンにて、邦人に対する医療アドバイス、健康診断フォローアップ事業を開始。現在はドイツ(フランクフルト )にて医療・健康アドバイザーとして活動する傍ら、医療相談、オンライン診療などで臨床活動を継続中。


 

<リファレンス>

難病情報センター ルビンシュタイン・テイビ症候群(指定難病102)

https://www.nanbyou.or.jp/entry/4067

https://www.nanbyou.or.jp/entry/4068

 

小児慢性特定疾病情報センター ルビンシュタイン・テイビ (Rubinstein-Taybi) 症候群

https://www.shouman.jp/disease/details/13_01_004/

 

GeneReviews Japan ルビンシュタイン・テイビ症候群

http://grj.umin.jp/grj/rts.htm

 

国立成育医療研究センター 

https://www.ncchd.go.jp/hospital/sickness/children/013.html